エデンの東(散文詩)

大地の呑んだ血の贖いは永遠の追放である。だがそれは何からの追放だろう? 楽園を追われた者は彼でなく彼の罪なき両親である。しかし確かに彼は追放されたのだ。彼の追われた土地の名はノドの地というらしい。だがその名よりその土地の位置関係をあらわす言葉のほうがひろく知られている。そこは楽園の東の地、エデンの東であったのだ。

彼の汚名は或る意味で光栄の冠(かんむり)を戴いている。人類最初の殺人者。動機がさらに不名誉な名誉をそのかたわらに添えている。

その時、空は凶兆の不穏なものをあらわしてほの暗く陰っていただろう。大地は太古のなにひとつ不自然でない創造主の御業(みわざ)のままにひろがる大地。赤茶の土と石と巌(いわお)の無垢な眺めは遮るもののないために地平線まで眺められたことだろう。

一つの石が非道の腕に用いられ凶器となって罪状を生む手助けをした。散らした色は虚空から落下して創始以来初めてその色で地上(ここ)を穢したのだ。ともかくも旧約聖書の記述に従えば浮かぶ景色はこういった類いの景色である。だが彼は何故彼の弟の頭をかち割ったりしたのだろうか。

何とも狭量なことに、単に彼よりも彼の弟のほうが神様に好まれたからである。弟のほうが贔屓されたからである。人類最初の殺人。それはみっともないつまらない嫉妬から起きたのだ。

不可解なのは全智全能の神様がこれを全くと言っていいほど予感していなかったような迂闊(うかつ)な顔をしていることである。何か恍(とぼ)けているのではないだろうか。

わらの犬」という映画のタイトルは、誰か恐らく偉人の言ったこんな言葉から確か取られたものである。〝神はわらの犬のごとく人を扱う〟。

アベルを殺した者はカインであってこれは神様の思惑とは違ったらしい。しかしカインの運命には定められた何かを感じる。勿論ここに生じる矛盾を解消する巧い手立てなど筆者は知らない。分かるのは彼の何から追放されたかで、勿論のこと無実の人としてそれまで生きた境遇からの追放であり、カインの末裔は今日(こんにち)も有罪である。だがそれは誰だろう?

おれもあなたも楽園にも牧場(まきば)にもいないから、恐らくエデンの東にいます。

 

 

✳ 画像はフリー素材です。フリー絵画。ウィリアム・アドルフ・ブグロー作。

 

随筆でなく散文詩のつもりで書きました。こんなの書いたらストーカーがまた自分の所業を正当化する口実に使うかも。自分を善良と信じて疑わない奴、て絶対馬鹿なんだけど……

まあストーカーは自分をストーカーとは認められないですよ。 あいつらはおれの上に立ちたいんです、何としても。で、思うのは、おれ別に高い地位とかにいない。笑

話変わるけど、不安感が続いています。ヤバイ……