poem “Erika””

小瓶の中の粉末はほのかに緑色をしている。

ジギタリスジギタリス

この粉末は致死量数回分の毒薬である。

 

窓は凍結したように冷え窓の外には冬の日の色褪せた場所がある。人も車も通らない静かな道の途中の場所。窓は積み木と二段ベッドのある二階の子供部屋の窓だ。

途中の場所。

 

二段ベッドの上と下とで寝ている子供はおなじ少女だ。おなじ顔とおなじ身体とおなじ体臭を持つおなじ少女。頭の位置がコンパスのように逆さまな位置関係にある。

おなじ毛糸の靴下とおなじ恥毛のない裸体。

途中の場所。

上の子か下の子のいずれかが言う。

〝お腹が空かない。お昼なら食べないといけないのに〟

 

未完成のパズルには余白がある。それはそのまま額装されて壁の一部をいろどっている。檣(ほばしら)と浮遊する鷗のある穏やかな海と港。

 

ふたりのほかに誰もいない。

外は冬なので部屋にはむしろ温暖なものがある。

 

 

                                                  ##erika

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