2023-07-02から1日間の記事一覧

熱帯夜(詩)

夜ふけの路の曲がり角 思いがけない邂逅が心胆をおびやかしたが これも確かに真夏の夜のつかのまの乱れである 燐光の緑に光る二つの眼 肥った縞の野良である 熱くさい夜暗(よやみ)の闇にたちまち失せた。 ✳ 画像はフリー素材です。 おなじ内容を確かずっと…

鍵(詩)

夢遊病者の白い悪夢はどこかでドアと出くわしている。 眩いものに充たされたそこは彼女の夢想の小部屋。 何かしら赤がある。赤い小物か一冊の赤い本。 たぶんベッドもあるだろう。そこで眼ざめ、そしてそのことをすぐに忘れる。振り向けばベッドはそこに或い…

Blue(詩)

青少年。わけてもこの少年は青白く澄んでいる。 血汐(ちしお)の宿す凶暴な悪の因子になよやかな少女を孕む外観。その唇は赤かった。 赤かった。膚の白さがその色彩に適って白い。 青の色味は彼の匂わす漂わす眼には見えない気配であって、彼の立ち去ったあ…

恋のバカンス(詩)

巨大とはまあ言える球場規模の銀色の宇宙船も、 攻撃も握手もせずにそこに留まるだけならば、 いずれはただの景観の一部とはなる。 そこは日本の首都の外れでもはや首都とは言えない場所だ。 家と家族と公園がある、そんな場所。 たぶん故障か操縦士が死んだ…