2023-07-05から1日間の記事一覧

鈴(詩)

砂はほとんど粉ともいえるきめ細やかなサハラ砂漠の砂である その赤茶けた熱砂の砂が硝子の筒のくびれを落ちる 湖畔の家は音もなく燃え 遠くの火事の赤らむものをただ見るように 音もなく叫びもなしに静かに燃えて燃えさかる 砂時計の砂はつかい果たせぬ終わ…

なみだ(詩)

すべて部屋にはその部屋の硬度をしめす琴線がある 氷点の張りつめた締まったものも弛緩しきった半笑いのものもある その部屋の情調は午後 陽ざしのつくる明暗が夕べ近くの午後を孕んで疲労感の陰りある情調を織り成していたが 琴線は弛まずに硝子を含むもの…

エデンの東(散文詩)

大地の呑んだ血の贖いは永遠の追放である。だがそれは何からの追放だろう? 楽園を追われた者は彼でなく彼の罪なき両親である。しかし確かに彼は追放されたのだ。彼の追われた土地の名はノドの地というらしい。だがその名よりその土地の位置関係をあらわす言…