ヴァンパイア聴聞(Ⅰ)詩

かつてこの身も老いと寿命を知っていたかとそんな瑣末なディテールに君は興味を抱いたわけだ。──知らないね。

疾うに忘れたものかもしれず或いは答えることを拒否する込み入った何らかの事情と〝傷〟があるのかも。──知らないね。君の得られる答えは残念ながらそれだけだ。

むしろ聞きたい。もし仮に、おれがあの生き急いだ預言者を近くでじかに見たことがあると述べたら? 嗚呼、エルサレムエルサレム。のちに神と呼ばれたあの男だよ。

君はそれを信じられるか。どうだ。

〝事実〟は人の心が決めるんだ。〝証拠〟を形づくるあれやこれやの条件が厄介なことに満たされない場合は。近年ではあの男の存在そのものを疑問視する者もいる。何を信じるかおのおのが自ら選ぶ権利を持つのが自由な社会。この国の社会はそんな高度な次元にはまだ達してはいないように見えるが、いいさ。これについては君も恐らく異論はないことだろう。

だけどね、居たよ、あの男は。見たことはおれはない。だけど居たんだ、あの男は確かに居た。君も異論はないだろう、おれを信じるくらいだからな。

迷信深い同胞(はらから)として君に一つは答えよう。人より幾らか長く生きるのはどんな心地のするものか。

答えは実に簡単だ。

この両の眼は夜しか見ない。だから見過ぎることはない。

因果は実によく出来てるよ。

 

 

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(Ⅰ)としたのは(Ⅱ)も書けそうだからです。書き飛ばしている感じ。何となくまだ調子が戻っていない感じがあるんです。