いつものように何かこまごましたことをあなたは夏のリビングでしている。
聴こえるものは空調の波動のような微かな唸り、
好天の日の光さす部屋の温度は冷えすぎである。
あなたは何かささやかなことをする。
リモコンを取ろうとしたか、
布巾で棚を拭こうとしそのために何かをどかすことなどしたか。
あなたは薔薇の花瓶を倒す。
空白と似たつかのまの絶句した時、
ハッと息を飲む感じ、
あなたはハッと息を飲みそして脳裡に砕け散る薔薇のおもかげを見る。
凍った薔薇が板敷きの上に砕けて壊れて絶えるのを。
そしてその花びらは白、
清めの色の花弁が砕け壊れ死ぬのをあなたはそこに見る。
次に感じたものは響きで、
それはあなたを現実の実感のある手触りと再び出会わせる。
それは想いに反するもので形状破壊の実体と重みを持った音。
あなたはそれを見る。
リビングの床に砕けた花瓶はすでに音を立てない。
四方に散ったものは小さな光沢と似て映る。
もとに戻らぬものがあり、
その痕跡ともの語る痛みとがある。
そしてそこに薔薇はない。
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好きな感覚かな、哲学でなく感覚の詩。