2023-07-08から1日間の記事一覧

戦火の切れ端(1)小品

ふいの驟雨(しゅうう)と誤解したのは間合いのずれのようなもののためです。爆撃のあってから、それは恐らく二十秒も経ってからパラパラと空から落ちてきたのでした。人の死ぬのに馴れ過ぎて失くしたものもあることでしょう。実際僕はおののくよりも、ホッ…

谺(こだま)詩

星と星との織り成したそれは奇跡であったろう 太陽を月の隠したつかのまの白昼の夜 たぶん数十年にいちど訪(おとな)う稀少価値の十数分間がある そこに彼女の悪夢はいまも忘られもせず息をひそめて蹲っているという 忘られもせず それも彼女の遺された足跡…