思いも寄らぬ運命と似て狂気もまた音もなくしのび寄る。正気と狂気の境目に確かな明瞭なボーダーラインなどはないのです。いつとはなしに飲み込まれ迷い込んだら出口のドアは容易には見つからない。狂気とはそういうもので、中にはそこを出られないまま人生をそこで終わらす人もいる。
何故そんな事が起こるのか? 勿論、自分はいま狂っているとは人はなかなか思わないから。狂気の国の領土においてその人は正気だからです。
怖ろしいことだけど、だけどそこにさえ成長はある。心を病に冒されてから、おれは前より旅をしました。戦いをしました。
昔の自分に戻りたいとは、おれは全然思わないのです…… 。
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