少年(詩)

地下鉄は轟音の中を進んだ

重金属のたたかい軋む何かしら深度のふかい轟音である

ことさらに揺れの烈しいそこは恐らく曲線だろう

重心の傾き揺らぐ波のうねりの感覚がある

うねりにあらがおうと力(りき)めばむしろちからは逆のベクトルへと作用する

委ねたほうが安定が保たれるのだ

地下鉄のドアの近くにつっ立ち

波のうねりにこの身を委ねながら立っていた

かつて或る悲壮な覚悟をもって同じように

同じような場所で同じようにしていた事がある

当時この路線は名称が少しちがった

あの少年は二度と家には帰らないつもりだったけど

ゆくあてもなく結局はしょんぼりと家路についたのだ。

 

いまは大人である

少年はたぶん瞳の奥にいる。

 

 

✳ 画像はフリー素材です。

盗撮、ほんと迷惑です。邪魔。創作活動に支障が出ている。そしてSNSで人気になりたいという人は、おれ以外の人と絡んでね。興味ない、そういうの。