河童(かっぱ)随筆

河童の木乃伊(みいら)は思いのほか小さいらしい。そして思いのほか怪奇なグロな様相である。確かどこかの神社か寺に保存されている。

旺文社の国語辞典によれば、河童は頭上に水をたくわえた皿をのせ甲羅を持ち子供の形をした想像上の動物である。

想像上の動物。

ではその木乃伊は果たして何の木乃伊なのだろう。何か別な珍種の亡骸が河童と誤認されたまま大事に祀られているのではないだろうか。

可能性はあるだろう。かなりある。だけど筆者は迷信ぶかくその木乃伊を河童と思う。

そのほうが素直だし愚かしく純真だから。わけの一つは確かにそれである。だけど真摯に熟考しても、やはり筆者は疑う気には余りなれないだろう。

人は自分で思うより大体は浅知恵である。河童についてほぼ見識のない筆者がその木乃伊の素姓を怪しみ斜(はす)に構えてみせるのもやはり浅知恵の為せるところに違いないのだ。

この道理を解する程度には知恵が浅くはたぶんないから筆者はここで斜に構えることはしない。そう、それは恐らく河童の木乃伊なのだろう。分からないけど疑うつもりはおれにはないよ。なかなかにグロな感じでむしろ半魚人の小型種みたいだったが、それすなわち河童なのかもしれないし。

銀幕の中で暴れる半魚人は確か人間の水着の女に惚れていた。遥か昔の京が都のあの時代、河原で髪を洗う女人を藪かげから盗み見る小柄ながらも奇っ怪な姿があったかもしれず。

黒髪とやわ膚の醸す性の蠱惑に見惚れる河童。それは怪奇を漂わす情景に違いないから、古めかしくて耽美なものを書けも描けもしそうであると創作の羅針盤は指し示すことだろう。

つまり河童は味方ということになる。

河童…… 

 

やっぱいたと思うね。

 

 

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肩こり。ずっと手書きで書いていて、肩が凝った。背中も丸まった。歳です。もう駄目だ。