2023-06-30から1日間の記事一覧

聖域(詩)

湖畔の街の森である ちいさな森で抜けるのに徒歩でも然して時間はかからない 道は寂しい 杉の木の群れの威容の足もとを心細く寂しく伸びる 途中に一つ奇異とも映るものがある いやに大きな赤い鳥居だ 神社はないが森の途中で鳥居を潜る 夏 湖の水がつくった…

河童(かっぱ)随筆

河童の木乃伊(みいら)は思いのほか小さいらしい。そして思いのほか怪奇なグロな様相である。確かどこかの神社か寺に保存されている。 旺文社の国語辞典によれば、河童は頭上に水をたくわえた皿をのせ甲羅を持ち子供の形をした想像上の動物である。 想像上…

叫び(詩)

夏、 水と火花の坩堝(るつぼ)の夏を壁と窓とで断って禁じてその部屋はしじまと影を内に囲っているのです。 キッチンにグラスが一つ、 水を充たして冷えている。 だが生活はここにない。 呼吸と声を喪って時計の針が過去のどこかで止まったままだ。 静寂と…

二つの星(メモ)

二つの星が衝突し二つとも滅んだならば滅ぼしたのは二つの星の互いを差し寄せる引力だろう。そんな関係もある。だけどもこれは哲学でない、もっと多感な青みを孕む麗しい清純派の感傷である。清純派の性を換えると半童貞になるから悲劇だ。 現在地と現時刻は…