2023-07-09から1日間の記事一覧

戦火の切れ端(4)小品

写真は匂いを伝えないから当事者以外の知ることの出来るのはいわば出来事の表題のようなもの。あの場所にいて私はずっとポロポロ涙を流してたけど、それは悲劇に胸を痛めたためではありませんでした。余りにひどい悪臭で、匂いがひどく眼に沁みたのです。あ…

戦火の切れ端(3)小品

僕の殺した米兵は、自分が死ぬと悟った時に何か度肝を抜かれでもしたかのような仰天した顔をした。彼は恐らくそのために自分の守備を実は本当には穴だらけにしていたように思う。銃弾の四方八方を飛び交う紙一重の場所にあっても僕には弾丸が当たる景色がま…

戦火の切れ端(2)小品

僕らの隊がその村を横切った時、ある村人はまだいたいけな息子を僕たちにあずけようとしました。砲撃のとどろく音もじきにまぢかに迫ると思い、無学な彼はここよりも兵隊のそばに居させたほうが安全と考えたのです。彼はどうやら少し見落としていました。息…