2023-06-29から1日間の記事一覧

生死を問わず(詩)

この女。 女には〝マリテス〟という呼び名があるが真に受けている者は少ない。かつて娼婦であったという噂があるが、これは何故だか何となく多くの者が真に受けている。 色褪せたレインコートは砂埃にまみれまぶされなおさら色が分からない。何色だろう? 無…

太陽の匂い(詩)

気凛(きりん)とは匂いのことであるらしい そこはかとなく立ち迷うそれはほのかな匂いと想う 白い項(うなじ)のほのめくように想い起こさす幻覚めいた微かな匂い 帰宅した時、衣服から確かに嗅いだように思える戸外の風と温度の匂い 窓辺で横たわる陽だま…

仔羊(こひつじ)の街(詩)

おれはおまえの罪状をひとことで要約できる 〝ひき返せる段階でひき返そうとしなかった〟 おまえには生涯つづく限りない奈落の時を 彼女の枕辺に青の造花を おまえには生涯つづく限りない奈落の時を 彼女のかたわらに花の心を おまえが負ける主な理由は 死ぬ…