生死を問わず(詩)

この女。

女には〝マリテス〟という呼び名があるが真に受けている者は少ない。かつて娼婦であったという噂があるが、これは何故だか何となく多くの者が真に受けている。

色褪せたレインコートは砂埃にまみれまぶされなおさら色が分からない。何色だろう?

無論彼女は彼女に見合うベルトを身につけて

荒野にいた。

死んだのはたぶん彼女のよくは知らない男だろう。

彼女の眼にはすでに憐れみの深みを孕む色と震えが浮かんでいたが、そこに涙のかげはなかった。

頭上に鳥が飛んでいる。

その鳴き声は笛の鳴くのに似て遠くに高く鳴りひびく。

蒼天の非情に澄んだ色と心が死者のため

そこで途切れたもののため

たぶんふさわしい景色の半分を形づくっていた。

もう半分は無論荒野だ。

そして彼女は慈悲の恵みを一つ残して立ち去った。

もはやひらきはしない両の瞼に

銀の硬貨を一つずつ。

地獄へ渡る舟の駄賃をこの死者が払えるように。

 

 

✳ 画像はフリー素材。フリー絵画。チャールズ・マリオン・ラッセル作。

 

書けた…… 書けてしまった。これも趣味作と言えばそうですね。