宇宙戦争(映画評)

火星人による地球侵略の恐怖を描いたSFの超古典の二度めの映画化。監督はスティーブン・スピルバーグ。その神経に黴の生え蝕まれた昔気質の批評家ならば、確実に酷評するだろう深みなきハリウッドの見せ物映画である。

この映画はなにか凄く良い。スピルバーグの演出力が幾つかの場面において際立ったものを発揮しているというのも勿論ある。しかしなにより素晴らしいのは、この映画を賑わせる火星人の非効率な侵略手法である。つまり、街を一瞬で焼き払ったりしない。それを行う科学力ならどう見てもありそうなのにそれをしない。彼らのタコみたいな侵略兵器に備わる殺人光線は文字どおり殺人的で、街を一瞬で焼き払わずに人間を少しずつ殺すのである。時には一人一人、時には二、三人纏めたかたちで。

これは勿論、スピルバーグが映画表現のツボをよく心得ているからだろう。原爆投下の記録フィルムとはわけが違うのである。作り物であることが最初から分かっている映画において、巨大な炎や爆発を人はそこまで怖がりはしないのだ。あるのはスペクタクルである。大量殺戮の実感は伴わない。大勢の人間が死んだという設定としての情報を与えられても、人はそれを実感するわけではない。遥かに効果的なのは、肉体的な表現を使うこと。人間が殺される瞬間を見せること。人体破壊の光景を眼の前で展開させること。

この映画の結末は尻すぼみ感に満ちた強制終了である。だけどもそこへ至るまでに充分心をつかまれました。

充分満足。

 

 

※  画像はフリー素材です。

これも観たのは随分前だな。敢えて観返さず記憶の断片だけで書く映画評。シリーズ化しようかな……

 

下のは映画ではなくドラマ?の予告。

 

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