令和枯れすすき(詩)

昭和ではなく今のこと、

雪ひらのちらつく晩の居酒屋で、

しなびかけた女が独り、

滔々とかつて慕った温もりをなおも慕っているのです。

 

あの人と出逢った晩も、

そういや雪を見たっけね。

あの人の肩にポツンとちょうちょみたいに留まったの。

あらと思ってわたしが取ってあげたのよ。

あのひとひらを夢だとはわたしは今も思わない。

雪の晩ではなかったけどね、

だけどあの夜 夫を知った。

 

女は独り、

ふと黙り込む。

写真はヨレヨレの印画紙でなくスマホの画面から優しげなものを投げかけ、

女は独り、

それを見つめて何やら思いつめた顔、

ぐいとグラスを干してから

急に荒れだす。

白髪交じりの汚い髪と

しなびかけた無惨な顔で。

雪ひらを降らして冷える夜空の色は声を持たない。

 

情けもかけてもらえんよ、

覚えてるから憎たらしいわ!

 

これもどうやら定刻通りと見て取れる。

居酒屋の痩せた主人が慣れた感じで首を振り振り。

 

 

※  画像はフリー素材です。

怒涛のように作品が変わる(笑)いや、どれも心を込めて書いていますけど。